「妊娠したら解雇」はダメ?技能実習生が妊娠した場合の適切な対応

ここ数年、技能実習生が妊娠し、ハラスメントが起きてしまうなどの悲しい出来事が多くみられるようになってきました。

受け入れている技能実習生が実習期間中に妊娠したら、あなたはどう対応するべきでしょうか?
この問題について、どんな法律が適用されるのでしょうか?

この記事では、技能実習生が妊娠した場合、適用される法律や対処方法について解説いたします。

妊娠を理由に技能実習生を解雇できない

答えは、
「外国人技能実習生が実習期間中に妊娠したことを理由に、事業主が解雇することはできません。」

そもそも外国人技能実習制度では、外国人技能実習生と受け入れ先企業との間には、「期間の定めのある雇用契約」が存在します。
在留資格と結びついた制度で、通常の雇用とは異なる点もありますが、この大原則は日本人の労働者と変わりません。

技能実習生には労働基準法・男女雇用機会均等法が適用される

「雇用契約」ですので、労働関係法令の適用があります。
労働基準法も適用されますし、男女雇用機会均等法も適用されます。

男女雇用機会均等法9条は、次のように定めています。

  • 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
  • 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
  • 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法の規定による産前休業を請求したこと、労働基準法の規定による産前休業または産後休業をしたこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
  • 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

この規定は、外国人技能実習生にも適用されます。

つまり、外国人技能実習生が実習期間中に妊娠した場合でも、それを理由に解雇することはできません。更に、妊娠したからといって不利益な取扱をすることもできません。

技能実習生が妊娠した場合の対応

技能実習生本人の意思を確認

まず、妊娠した技能実習生に対して、今後も技能実習を継続するかどうかの意思確認を行う必要があります。
なぜなら、技能実習生と受け入れ企業との間には,「期間の定めのある雇用契約」が存在するためです。そのため、原則として契約期間内に解雇することはできません。
監理組合や受け入れ企業が、技能実習生に対して意思確認を行います。そこで、技能実習生本人が「実習継続ができないため帰国する」と意思表示した場合のみ帰国する、となっています。

技能実習を中断→落ち着いたら再開

妊娠したとしても、技能実習生本人が継続したいと言うこともあります。
本人が実習の継続を希望する場合は、いったん「技能実習の中断」をして、後日「技能実習の再開」をするという対応方法があります。
具体的には、監理団体を通じて技能実習機構に所定の届出書(技能実習実施困難時届出書)を提出して、技能実習を中断します。
再開する時には、改めて技能自習計画の認定申請をして認定を受け直す必要がありますが、中断してもその分実習期間が延長されるわけではありません。
ちなみに、外国人技能実習生の立場が「期間の定めのある」雇用契約だということは、妊娠に限らず、原則として契約期間内に解雇することはできません。
技能実習生側に退職の自由がないというだけではありません。

まとめ

ここまで、技能実習生が妊娠した場合の規定や対応方法について解説してきました。

現在の技能実習制度が、雇用契約の形態で設計されている以上,実習生が妊娠した場合にも日本人の従業員と同様に、労働関係法令の保護を受けます。
妊娠を理由に解雇することはできませんし、本人の意思に反して帰国させることもできません。

技能実習生を初めて受け入れた企業にとっては特に、「妊娠」というのは想定外の出来事だと思います。その時には、監理組合と協力し、受け入れ企業と技能実習生の両方がつらい思いをしない方法策をとるようにしましょう。

この記事が、技能実習生が妊娠した場合の一つの対応策を提示し、あなたの役に立つことが出来たなら嬉しい限りです。

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